僕の仕事は詩が主です。中には絵本や歌など、子どもに向けた仕事受けることがありますが、書き方としては、大人も子どもも区別しません。子どもが読んで面白くなければ大人が読んでも面白くないし、大人が読んで面白いものは子どもだって喜ぶだろうというので、割と一貫してそのように書いてきました。

 僕は、大人の中にも幼児性というのはあると思うんです。その幼児性をすごくクリエイティブな要素だと大事にして本を読んでほしい。そうすると、子どもっぽい本でもすごく面白いところがあるってなるでしょう。本を選ぶうえでも、親や大人が”自分の中の子ども”を自覚することが大事じゃないかなと思うのです。
 絵本なんかでも、やっぱりこれも文学である、あるいはアートであると思って読んでみて、これはちょっと面白いと思ったら、子どもにすすめるのがいいんじゃないかな。大人自身がすごく喜んで読んだものだったら、子どもにその気持ちが伝わるんですよね。「これいい本だって言ってるから読めよ」というのとは、ちょっと違うでしょう。

学校に入るようになったら知識とかも必要になってくるわけですが、ある程度、子どもが小さい頃には、本を通して親子の感情の交流があったほうがいと思います。大人が本を面白い、いいなと思い、それが子どもの読んでみたという好奇心につながる。けっして強制するのではなく、自然に本を身近に感じてくれるのではないでしょうか。
(談)

詩人

谷川俊太郎

たにかわ しゅんたろう

1931年東京生まれ。1952年第一詩集『二十億光年の孤独』を刊行。
1962年「月火水木金土日の歌」で第四回日本レコード大賞作詩賞、
1975年『マザー・グースのうた』で日本翻訳文化賞、1982年『日々の地図』で第三十四回読売文学賞、1993年『世間知ラズ』で第一回萩原朔太郎賞などを受賞・著者多数。詩作のほか、絵本、エッセイ、翻訳、脚本、作詞など幅広く作品を発表している。

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