絵本は親子の絆を育み、想像力を養うもの
いつの時代も心の成長に欠かせません
絵本は、過去の世界、未知の世界、そして創造の世界へと導いてくれる存在。人生の羅針盤であり、心を豊かにする力を備えています。
その意味を、戦禍のウクライナであらためて強く感じました。現地ではユニセフの援助プログラムの一環で、子どもたちに寄り添う活動が行われており、私も外務大臣として日本の絵本を持って訪れました。地元の子どもたちに日本の飛び出す仕掛け絵本をプレゼントすると、ページを開いた瞬間、彼らの表情がぱっと明るくなり、歓声が上がったのです。その光景に、極限状態が日常化する中で、子どもたちは懸命に心のバランスを保とうとしていたのだと痛感しました。同時に、絵本には子どもたちの心に直接語りかけ、言葉を超えた「共通言語」として訴える力があるのだと気づきました。
私自身、かつて働きながら二人の子どもを育てていました。当時は一日の終わりの読み聞かせが日課で、早く寝かせたいけれども、子どもたちは「もう一冊、もう一冊」とせがみます。気づけば一晩で10冊も読む日もありました。こちらが手抜きをしてページを飛ばそうとでもすれば、ストーリーを覚えている子どもたちは、すぐに気づいて抗議してきます。私は眠たい目をこすりながら、それでもページをめくりながら読み聞かせをしていました。今振り返れば、子どもたちと一緒に本を楽しんだ時間は、親子の絆を築くかけがえのないものでした。
子どもの成長とともに、読み聞かせする本にも活字の要素が徐々に増えていきます。活字は、絵だけでは表現できない想像力の世界への入り口です。私が心を動かされる一冊に、赤羽末吉さんの挿絵による『スーホの白い馬』があります。モンゴルを舞台に、馬頭琴という民族楽器の由来を描いたストーリーで、読むたびに涙がこぼれるほどの感動を与えてくれます。素晴らしい作品は、国境を越えて人々の心に響くもの。私は今でもこの本を、多くの若いお母さんたちに贈っています。
人生100年時代といわれる今、私たちは「ウェルビーイング」(自分らしくイキイキと生きる幸せ)という言葉の意味を改めて問い直しています。かつて生活条件が十分満たされていない時代にあっても、本が人の心を育て、人生のさまざまな場面で自分を支えてくれる「栄養」でした。その考えは、AIデジタル時代を迎えた今も変わりません。幼いころに愛する母親が読み聞かせてくれた絵本との出会い、そこから自然に導かれる活字文化の世界。そうした心の成長は、人間の本能ではないでしょうか。
静岡市生まれ。東京大学(国際関係論)卒業。三菱総合研究所研究員を経て、ハーバード大大学院留学(政治行政学修士)。2000年衆院選で初当選(現在9期目)。内閣府特命担当大臣(少子化対策・男女共同参画)、公文書管理担当大臣、法務大臣、外務大臣を歴任。現在は裁判官訴追委員会委員長。

活字文化議員連盟 会長
自由民主党 衆議院議員上川陽子